先輩

往来と月音。

往来は礼木と違って刃向かう対象ではないし
吉田と違ってムキになる対象でもないし
鉄と違って尊敬する対象でもないから
なんていうか、相談とか質問とかしやすいポジションだといいな。

礼木も往来も、互いが互いを完全に信頼してるし
信頼されてることをわかってるし、裏切らないことをわかっているし
だからこそそんな相手を裏切る真似はしないし、できない。

月音「仲良いのはわかりますが…なんでそんなに信頼できますかね。
　　　幼馴染といえど赤の他人でしょう。両手ばなしでどうして
　　　無防備でいられますか。恐怖は？危機感は？」
往来「んー……飯原はさ、自転車乗れるだろ？」
月音「はぁ？そりゃそうですけど、質問に―」
往来「初めて補助輪取る時、少し恐かっただろ」
月音「…はぁ」
往来「でも乗れたらもうどうってことないんだよな、不思議と。
　　　むしろ加速した方がより安定するし。」
月音「…例えがよくわかりません。」
往来「そ？結構いい線いってると思ったのになぁー」

往来「でもお前もいつか、そんな奴がほしくなるよ。」
月音「…いりません」
往来「まぁほしくて手に入るものじゃないか…。
　　　でもきっと、現れるから。」


きっと、全幅の信頼をおいてる２人の関係に、少なからず
憧れとか羨望とかを抱いてるといい。そんなふうに誰かに
素直に心開いて生きていけるもんなのかと。
傷の舐めあいなんかじゃなくて、支えあえるもんなのかと。
いらないとかいいながら、いつか本当に来てくれるのだろうか
とか、少し恥ずかしいけど、期待をしてしまってるといい。
それならまずは自分から心開いていかねばね。それが難しい。